行政書士試験 過去問から読み解く 民法 債権法 (種類債権)
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種類債権と特定物債権をマスターする
特定物債権と不特定物債権(種類債権)
債権には特定物債権と種類債権がある。特定されているか否かで効力が異なる。
尚、種類債権であっても、特定後は特定物債権となる。
特定物債権 400条
特定物債権 :特定物の引渡を内容とする債権 ⇔ 種類債権(不特定物)
- 特定物とは? :当事者が物の個性に着目して、取引の客体としたもの。
- 不特定物とは? :個性を持たないもの。例:規格 銘柄
- 代替物とは? :代わりのきくもの
- 非代替物とは? :代わりのきかないもの
効力
- 債務者は善管注意義務を負う。(400条) → 免責には → 善意・無過失
- 自己のためにするのと同一の注意義務を負う。(827条など) → 免責には → 無重過失 *1
- その物が滅失した場合、
A:債務者に帰責性がある場合 ⇒ 債務不履行の問題 415条
B:債務者に帰責性がない場合 ⇒ 危険負担 (債権者主義) 534条 - 原則として契約時に所有権移転
*ほとんどの場合は善管注意義務です。827条が適用されるのは、無償の寄託契約の場合など。
責任の重さからいうと、善管注意義務 > 自己のためにするのと~ となります。
つまり、善管注意義務の方が注意義務の度合いが大きいと考えれば良いということです。
- 善管注意義務を負うのは引渡し時まで!
- 債務者が履行遅滞の場合、不可抗力についても責任を負う。
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
種類債権 401条
一定種類の物の一定量の引渡しを目的とする債権
(種類債権)
第四百一条 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
種類債権=不特定物債権
- (不特定物債権):特徴として債務不履行はありえない。(なりにくい)→ 債務者は追完義務(完全履行義務)
- 契約だけでは所有権は移転しない
- 何をもって「同じ種類」と見るかは当事者の意思によってきまる
- 種類債権でも特定された段階で特定物となる。
特定
特定すると 種類債権 ⇒ 特定物債権 になる。
持参債務の特定 (持参債務の原則)
債権者の住所または営業所で履行しなければならない債務
この場合は、現実に目的物を提供したときに特定される
取立債務の特定
債務者の住所または営業所において履行されなければならない債務
この場合は、債務者が準備・分離・通知をしたときに特定される
要件
:401条2項
債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
効果
- 債務者は善管注意義務を負う
- その物が滅失すれば履行不能
- 危険が債権者に移転する
- 目的物の所有権が買主に移転
- 信義則上変更権がある
q:瑕疵あるものでも特定を生じるか?
A:特定生じない ⇒ 不完全履行
ベース問題
Aが「もち米」を50キロ買う契約をB米店との間で行い、Bによる引渡しの準備がまだ終わっていない場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 引渡し場所についてA・B間で決めていなかった場合に、BはAが取りに来るまで待っていればよい。
- Bは、目的物が特定されるまでの間は、B米店にある「もち米」の保管について善管注意義務を負うことはない。
- 目的物が特定される前に、隣家の火災によりB米店の「もち米」がすべて焼失してしまった場合、その焼失はBの責任ではないので、Bは他から「もち米」を再調達して引き渡す義務はない。
- A・B間で取り決めがなければ、Bは上等な「もち米」を50キロ引き渡さなければならない。
- 「もち米」50キロの所有権は、目的物が特定される前でも、特約がなければ、A・B間の売買契約をした時に移転する。
正解:2
1:× 484条
2:〇 不特定物は特定されれば特定物となり、売主には善管注意義務が発生するが、特定前であれば善管注意義務はない。 400条
3:× 特定前であれば、同じものを調達して給付する義務がある。
4:× 上等ではなく、中等で良い。 401条
5:× 種類債権の場合は、原則として目的物を特定したときに所有権が移転する。